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"星に願いを" ~カノープスを見よう~

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星座の星の中で、地球から見た時に一番明るく輝いて見える星はどれでしょうか?

それは、おおいぬ座の「シリウス」で、視等級はマイナス1.46等。
冬の大三角の星としても有名ですね。
この時期、夜空を見上げると南の空でひときわ明るくきらきらと輝いています。

では、2番目に明るい星の名前はご存知ですか?

それが、りゅうこつ座の「カノープス」。
視等級はマイナス0.74等とかなり明るいのですが、真南の空に来た時の高さ(南中高度)は福岡市で約4度ととても低く、大気の影響を受けて本来の明るさよりも暗く、少し赤みを帯びて見えます。地平線すれすれですので、南の空が開けていても、街明かりの中で見つけるのはなかなか難しいでしょう。

その昔、中国ではこの星を「南極老人星」(なんきょくろうじんせい)や「寿星」(じゅせい)と呼んでいたそうです。
南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起がよいとされ、一目見ると長生きできると言われています。また、戦争や疫病などで世の中が乱れている時には見えず、平和な時代になると見えるという言い伝えもあったそうです。

幸福や平和や長寿をもたらすと信じられてきたカノープス。
この時期、条件がよければ、福岡からもこの縁起物の星を見ることができます。
その条件とは、街明かりが少なく南の空が開けている場所であること。そして地平線近くに雲がないこと。
冬の大三角が南の空に高く上る頃がチャンスです。
冬の大三角の上辺の2等分線をシリウス側(下)に向かって、地平線近くまで延ばしていったあたりにカノープスがあります。
カノープスの南中時刻は、おおいぬ座の前足にあたる2等星「ミルザム」の南中時刻とほぼ同じです。南中時刻前後の時間にシリウスの右で輝くミルザムを見つけたら、そこから真下に向かって視線を下ろしていく。これが最も確実な方法です。

地平線すれすれの低い空でゆらめくカノープスを見つけた時には、嬉しくて思わず「あった~っ!!」と叫んでしまうかもしれません。
確かに、ラッキーでハッピーな気分になります。(個人的な感想です。)
行きたいところに行き、会いたい人に会える、元気な世界が戻ってきますように。
カノープスを見ながら、今年もそう強く願いました。

文:福岡市科学館 学芸員 丹野佳代子