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[レポート]開館4周年記念「JAXA 若田光一宇宙飛行士と語る会 宇宙飛行士になるために必要なこと」

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[ INDEX ]

JAXA 若田光一宇宙飛行士と語る会を開催 /  宇宙飛行士へのあゆみ  /  実際の宇宙飛行士の訓練とは?  / 宇宙でチームワークを発揮するために宇宙飛行士が心掛けていること  / 幅広い宇宙飛行士の仕事  / 新たな世代の宇宙飛行士が活躍する場  / 新しい宇宙飛行士の募集  / 質問タイム  / 若田光一宇宙飛行士からのメッセージ  /  最後に  /  6階「若田光一名誉館長コーナー」のご案内  /


開館4周年記念「JAXA 若田光一宇宙飛行士と語る会 宇宙飛行士になるために必要なこと」を開催

2021年10月に開催した 福岡市科学館 開館4周年記念「JAXA 若田光一宇宙飛行士と語る会 宇宙飛行士になるために必要なこと」のレポートをお届けします。
福岡市科学館名誉館長でもあるJAXA若田光一宇宙飛行士にご出演いただき、宇宙飛行士のお仕事や大切にしていることなどについてお話しいただきました。
宇宙での生活や宇宙飛行士の仕事には、普段の私たちの日常生活にもつながるヒントがたくさん詰まっています。
宇宙飛行士に憧れがある方はもちろん、そうでない方もぜひご覧ください!

若田光一宇宙飛行士と福岡をリモートでつなぎ実施

2021年10月16日(土)、福岡市科学館の開館4周年を記念して「JAXA 若田光一宇宙飛行士と語る会」を開催しました。
2022年秋以降打ち上げ予定のスペースX社のクルードラゴン宇宙船運用5号機への搭乗が決定し、国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションに向け訓練中のJAXA若田光一宇宙飛行士。
日本人最多となる5度目の宇宙飛行を控えたJAXA若田光一宇宙飛行士に、訓練の合間の貴重なお時間をいただき、「宇宙飛行士になるために必要なこと」をテーマにお話しいただきました。

いよいよリアルタイムで若田宇宙飛行士とつながる、ワクワクドキドキの瞬間。
「若田さーん!」の会場の呼びかけでサイエンスホールのスクリーンに若田宇宙飛行士が登場!
参加者の皆さん、この日をとても楽しみにされていたようです。
中にはマイ宇宙服を着て参加されている方もいらっしゃいましたよ。


01


宇宙飛行士へのあゆみ ー宇宙や航空機への憧れから航空機の技術士、そして宇宙飛行士へー

若田宇宙飛行士の宇宙への憧れをお持ちになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
きっかけは、1969年7月20日、当時若田宇宙飛行士が5歳の頃。
アポロ11号による人類初の月面着陸のニュースをご覧になり宇宙への大きなあこがれを抱いたそうです。
小学1年生の頃には、「テストが早く終わればテスト用紙の裏側に自分の好きな絵をかいていいですよ」と先生から言われて、テストの記入が終わった後、アポロ11号の月までの軌道の絵を描いた若田宇宙飛行士。この時のイラストは福岡市科学館6階ホワイエにある「若田光一名誉館長コーナー」で展示されていますのでぜひご覧ください。



ご両親の出身地の九州へ帰省の際には、出身地の埼玉から飛行機で移動されることが多く、幼い頃から航空機に興味をお持ちだった若田宇宙飛行士。
高校卒業後には航空機の技術者になりたいという強い思いとともに、九州大学工学部航空学科に入学、福岡で6年間の学生生活を過ごされました。学生時代は琵琶湖での鳥人間コンテストに参加したり、大分県でハンググライダーの練習をしたりと、飛ぶことに強く憧れていらしたそうです。
大学卒業後は、航空会社で技術者となり、そこから宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)による宇宙飛行士候補募集に応募し、宇宙飛行士への道が開けたそうです。
1992年には宇宙飛行士候補者として選抜され、NASA(米国航空航空宇宙局)の宇宙飛行士訓練コースへ。
アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本からの参加者24名のうち日本人は1名のみで、加えて若田宇宙飛行士が最年少というクラスで訓練が開始されました。


03

若田光一宇宙飛行士が29歳の時に参加した、米国航空宇宙局(NASA)第14期宇宙飛行士候補者(ASCAN1992) クラスの集合写真 / 撮影時期:1992年9月(日本時間)


実際の宇宙飛行士の訓練とは?

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ロケットや宇宙船に関する訓練
宇宙船の操縦のためには様々な技術や資質、チームで活動する能力が必要です。
そのため訓練は、ロケットや宇宙船に関する内容が非常に多く、中でも宇宙船の搭乗・打ち上げ・ドッキング・ランデヴー・帰還などの訓練が集中的に行われます。
その他、宇宙飛行士としての基本的なシステムを運用する能力を培うために、航空機を使った模擬無重力運動での訓練やジェット練習機での操縦訓練、船外での様々な組み立て・修理の技術訓練など、内容は多岐にわたるそうです。
例えば、国際宇宙ステーションの船外にあるコンピューターや電力を供給する装置が壊れた時は、宇宙飛行士が修理を行う必要がありますが、若田宇宙飛行士は、この講演会の2日前に約6時間にわたって、プールの中での国際宇宙ステーション整備訓練をされたばかりだとおっしゃっていました。


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船外活動(Extravehicular Activity: EVA)訓練を行う若田光一宇宙飛行士
NASAジョンソン宇宙センター(JSC)/無重量環境訓練施設(NBL)
撮影日:2021年11月19日(日本時間)

世界中で行われる訓練
世界15か国が協力するミッションである国際宇宙ステーションでのシステムや実験を行う訓練は、日本や米国、ヨーロッパ、ロシアのそれぞれの国で実施されます。
今回の講演会では、米国ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターでの訓練の合間にご出演いただいた若田宇宙飛行士ですが、この講演会以降は日本のJAXA筑波宇宙センター、ロシア、ドイツなどで、訓練を重ねていく予定ということをおっしゃっていました。


救急医療の訓練
中には医師である宇宙飛行士もいらっしゃいますが、宇宙で怪我をしたり病気になった場合のために、ISSに長期滞在する宇宙飛行士は救急医療の訓練があり、切り傷を縫ったり、酔い止めの薬を注射したりと、様々な救急医療訓練が実施されます。宇宙では、地上にいる専門の医師と通信をして支援を受けながら緊急医療の活動を行うそうです。


チームスキル向上のための訓練
これまでに4度の宇宙滞在を通じて、多くのチームの仲間の方々と一緒にミッションを経験された若田宇宙飛行士。
宇宙飛行士の仕事は一人でできることがかなり限られているため、チームのパフォーマンスが非常に重要で、チームスキル・集団行動能力を身につけ向上させるための訓練が行われるそうです。


宇宙でチームワークを発揮するために宇宙飛行士が心掛けていること

チームワークを発揮するために、訓練や宇宙での仕事をする上で宇宙飛行士が心がけている「チームスキル」。
「チームスキル」には5つの大きな柱があり、この5つのチームスキルを宇宙で最大限に発揮するため、宇宙船のシミュレーションなどの技術的な訓練とは別に、冬山登山や海底基地などでチームスキルを習得し向上させるための訓練が実施されるそうです。
これらのチームスキルは、宇宙の仕事に限らず、学校生活や家庭、仕事など、普段の生活の中でも適用できるものですよね!


06

自己管理
 心理的、身体的な健康維持のため、衛生管理、時間管理、睡眠の確保、感情のコントロール等を行える事。

リーダーシップとフォロワーシップ
 様々な状況に応じて両方を適切に行使できる事。フォロワーシップとは受け身ではなく、積極的にリーダーを支援して、チームの目標達成のための意見や提言を惜しまない事。宇宙飛行士においては、リーダーかつリーダーを支える側にもなれることが必要。

チームワーク
 みんながチームの目標を共有し、その達成に向けて各自の果たすべき役割を認識し、行動に対して責任を持てる事。

チームへの配慮
 全員の仕事のペース、疲労や心理的な状況を把握して、みんなが健康に過ごせるために気遣い、必要な対策を積極的に講じられる事。

コミュニケーション
 相手に対して明確に自分の意思を伝えられる事。逆に相手の言う事をしっかり聞いて、思い込みでなく正確に理解する事。正確に理解するために必要があればきちんと質問ができる事。間違えば事故につながる可能性があるため、チームの仲間とコミュニケーションをとる事が重要。

多様性のあるチーム

宇宙飛行士は世界各国から仲間が集まり一緒に仕事をしていく国際的なクルー。
若田宇宙飛行士は次のようにおっしゃっていました。

「母国語・文化・習慣・宗教も違う多様性のあるチームの中でチーム能力を最大化するためには、対人関係が非常に重要で、そのためには自分が心地よく感じる程度以上に仲間に心を開いて積極的にコミュニケーションを図ることが大切です。技術的な差をチーム内で補うことよりも、対人関係の能力をどう学んでいくかというところが難しいところなので、チームの能力を高めるために、必要なことをチーム内で積極的に話し合う機会を設けていくということや、チーム内で対人関係の問題を相談できる環境をつくっていくこと、フィードバックを行っていくことが大切です。」 
「普段からできることは実は普段の生活、仕事、学校でもいくつもあり、課題をどうやって克服していくかをチームの皆で話し合って訓練を行っておくということは、チームの能力を高めるためにもとても重要だと思います。」


幅広い宇宙飛行士の仕事

宇宙飛行士の仕事は、訓練や宇宙飛行だけではありません。
広報普及や、宇宙ステーションの運用管制室で地上から支援を行う仕事、技術者と一緒に宇宙船や宇宙ステーション開発を行う仕事など、多岐にわたる仕事をされているのですね。


07


新たな世代の宇宙飛行士が活躍する場

現在募集されている宇宙飛行士が活躍するのはどのようなところなのでしょうか。
人類の活動領域の拡大という観点から、これまでの有人宇宙活動の歴史をふりかえり、新たな世代の宇宙飛行士が活躍する場となるこれからの宇宙探査の展望、次のフィールドとなる「ゲートウェイ」がどのようなところであるのかなどについてお話しいただきました。

現在JAXAの宇宙飛行士の活動の舞台となっているのは、高度約400kmで無重力環境を利用した様々な実験、観測が行われているISS(国際宇宙ステーション)。日本は、実験棟「きぼう」や宇宙ステーションに物資を補給する宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)でISS計画に参画していますが、地球低軌道からさらに月周回軌道でのミッション「アルテミス計画」や火星探査でも日本の技術は注目されています。
例えば、世界の信頼を高いものにしている「こうのとり」の後継機で、現在開発が進められている「HTV-X」は「こうのとり」よりも低コストで輸送能力もアップしていて、将来の月ミッションで物資の輸送を行う可能性もあるとのこと。

日本が米国提案の国際宇宙探査に参画することが日本政府として決定されて以来、関連する国際合意への署名が進むなど、国際宇宙探査に向けた機運が高まりつつあります。
国際間の有人宇宙活動でも信頼を獲得し、日本人の宇宙飛行士が月周回有人拠点「ゲートウェイ」や、月面において活躍する機会が得られることを期待しつつ研究開発などの準備が進められているそうです。

新たな世代の宇宙飛行士として認定された後は、国際宇宙ステーション(ISS)や日本実験棟「きぼう」をはじめ、月周回有人拠点「ゲートウェイ」、月面が活動の場となることが見込まれているのですね。


新しい宇宙飛行士の募集

今回募集されている新たな宇宙飛行士選抜について、どのような人物像が求められているのでしょうか。
JAXAの公式ホームページには下記のように記載されています。


(1) 国際共同事業、多国籍なメンバーシップのチームの中において、日本の代表として、多様性を尊重しつつ、ミッションを成功に導くための協調性と十分なリーダーシップを発揮できる。

(2) 来たる国際宇宙探査ミッションを見据え、様々な環境に対しても適応能力があり、宇宙という極限環境での活動においても、柔軟な思考と着眼点を持ち、自らを律しつつ、適時的確な判断と行動ができる。

(3) ミッション参加により得た経験・体験・成果を世界中の人々と共有する表現力・発信力があり、それらを活用し人類の持続的な発展や次世代のために貢献する。


若田宇宙飛行士は下記のようにおっしゃっていました。

「宇宙飛行士の訓練は数年、長い期間が必要になってくるんですけれども、地上や宇宙含めてストレス環境下でも任務に対応する必要がありますので、明確な目的意識を持つことや、心、身体の健康を維持できるというのが不可欠ですね。
それから、宇宙開発や実験、運用など新しい技術がたくさんでてきます。そういった技術に対応してミッションを遂行する必要があり、様々な技術の進歩に対応できる能力が必要になってきます。
また、宇宙飛行士の任務は一人で達成できることが非常に少ないため、チームとしての成果を最大化するための集団の行動能力が必要になってきます。
協調性やチームワーク、リーダーシップ、フォロワーシップ、問題解決力、そういったものが大切になってきます。
ただし、資質というのは選抜課程の話であり、訓練で育成を行っていくものだと思います。」


質問タイム

08

  質問 1  

参加者:
好きな宇宙食は何ですか。
また、宇宙食はおいしいのですか。また、宇宙食で健康管理はできるのですか。

若田光一宇宙飛行士:
健康管理のためには宇宙飛行士にとって宇宙食は不可欠なものです。宇宙の無重力状態に長期滞在しますと骨がもろくなってしまい、骨粗しょう症という病気に近い状態になってしまいます。年齢に関係なく骨の密度が低下するため、それを回避するために適切な食事や運動が重要です。
個人的には宇宙では地上と同じくらいの食欲が出ないときもありました。ただそんな中でも、地上と同じ食べ物は特に私も好きで食べていました。
ロシアやアメリカの仲間も好んで食べてくれていた日本食、例えばカレーライスですとかさばの味噌煮みたいなものは特にロシア人の仲間にはすごく人気があったように思います。和食、日本食というのは地上でも世界各国でも、宇宙でも皆さんに好まれているすばらしい文化の一つだと思います。


  質問 2  

参加者:
夢を叶えるために若田さんが大切に思っていることはなんですか

若田光一宇宙飛行士:
夢を叶えるための王道は特になかなかないとは思うんですけれども、やはり忘れてはいけないことは「情熱をもつ」ということだと思いますね。
夢ってたくさんありますよね。
例えば、今月末のサッカーの試合で勝つだとかピアノの演奏会で上手に弾くだとか、学校であったり仕事であったり、いろんな目標があると思いますが、「目標を明確にして実現するための情熱を持ち続けること」が重要だと思いますね。情熱がなかったら、つらいことがあっても努力するということにならないのかなと思いますので、自分がやりたいこと、自分を発見して、なぜこれをしたいのかということを自分が納得して、興味の対象を明確にして目標を持てば、それに対して自ずと情熱がわいてくるのかなと思いますので、その情熱を持って皆さん一人ひとりの夢そして目標にチャレンジしてもらいたいなと思います。


  質問 3  

参加者:
若田さんにとって宇宙とは一体何ですか。

若田光一宇宙飛行士:
非常に深い大きな難しい質問だと思いますけども、私にとってもそうですし、世界中、世界中でなくても宇宙人がいたとしたら宇宙人もそうだと思いますが、限りない夢と希望を与えてくれる新しい創造の空間だと思います。
果てしない挑戦、課題を与えてくれるすばらしい場、それが宇宙だと思います。
私もこれまで宇宙開発の仕事を実際の有人宇宙活動でも、新しい、これまで自分が経験をしたことのないことを一つひとつ挑戦させてもらいましたけれども、それは本当に果てのないものだと思うんですね。
多くの人々に限りない未来を与えてくれる創造の空間、これがやはり私にとってそれから多くの方々にとって「宇宙」ではないかなと思います。


  質問 4  

参加者:
何度も宇宙にいかれた中で、命の危険を感じたことはありますか。

若田光一宇宙飛行士:
危険ということは感じませんが、大惨事になりそうだと感じたことはありました。
宇宙ステーションでの緊急事態というのは大きくわけて3つ定義されていて、ひとつは宇宙ゴミだとか隕石などにぶつかること。
それから火災。それからもうひとつは宇宙ステーションの冷却の装置で高濃度のアンモニア使うのですが、それを吸い込んでしまうと高い確率で死んでしまうので、そんなことになりそうな時にどう克服するかという緊急事態があります。
その中で、火災にはつながりませんでしたが、宇宙ステーションで煙がでることがあり、煙が宇宙ステーションの中にある程度充満するようなことがありました。命の危険まではなかったですけれども、緊急事態が発生したということで、これまでの訓練通り対応することができました。命の危険は感じませんでしたが、緊急事態に対して自分たちがどう対応するかということを普段から準備をしていくことの重要性、そうすることによって落ち着いて危機的な状況に対応できるんだということを身をもって感じました。
これは地上での災害も一緒ですよね。
普段から危機的な状態に陥る可能性があることに関しては、どのように対応していくかということを自分や家族、そして学校や仕事の仲間と普段から話し合っていくことが大切だと思います。


09

新型コロナウイルス感染予防をしながら国際宇宙ステーション(ISS)の緊急事態対処訓練を行う若田光一宇宙飛行士ら NASAジョンソン宇宙センター(JSC) / 撮影日:2021年11月13日(日本時間)


  質問 5  

参加者:
若田宇宙飛行士が最初に宇宙に行った時に感じたり思ったりしたことは何ですか。

若田光一宇宙飛行士:
宇宙に限らず初めてしたことは皆さん記憶に残ることが多いのかなと思いますが、私も同じです。初めて宇宙に行ったのは1996年1月11日、スペースシャトル エンデバー号で打ち上がったんですけれども、打ち上がった時というのはアメリカの時間5時41分という夜明け前の暗い時間だったんですね。夜打ち上がって主エンジンが停止して、直後ですけれども、宝石のように青く輝く水の惑星の地球が目の前に現れてきたんです。初めて宇宙から見る地球はうすい大気層で地球上の生命体を守ってくれているんだな、いかに私たちのふるさと、地球が美しいか、写真などでは見たことがありましたが、自分の眼下に広がる宝石のように輝く地球をみて、私たちは本当に幸運な生きものだなというのを感じました。素晴らしいふるさとを持てることへの感謝の気持ちみたいなものが、宇宙で初めて、最も強く印象に残っていることです。あれ以上の感動というのはなかなかないのかなと思いますけれども、やはり初めて経験するというところで強く印象づけられたのだなと思います。私たちは地球の環境を守っていかないといけないとその時に強く感じました。



若田光一宇宙飛行士からのメッセージ


koichiwakata

新たな宇宙飛行士の募集が行われるわけですけれども、ぜひ多くの皆さんに新しい仲間として宇宙飛行士の募集に応募してくれることを期待しています。
今回の講演会の参加者の中からも応募してくれる人が出てきてくれたらなと思っています。
今回の募集は13年ぶりですけれども、今後は4年に2回程度募集をおこなっていきたいと思っています。
今回はまだ募集の年齢で応募できないという方もいらっしゃるかもしれませんが、今後また宇宙飛行士の募集は継続的に行われていくかと思いますので、ぜひ、宇宙を目指して、皆さんにも今後の募集に応募していただければと思っています。
最後に皆さんにお伝えしたいことが大きく4つあります。


「自分で変えられない事」を憂うのではなく、「変えられる事」に注力しよう

コロナ禍でかなり行動が制限される中で、やはり、ああいうことがしたいなとか自由に外に行きたいななど私も強く思いましたけれども、宇宙飛行士の仕事をしていて、自分ができること、自分が変えられることに注力することが最も効率的だなと思ってきました。自分ができないこと、自分が変えられないことをあれこれ思い悩むのではなく、自分が変えられることに注力するのが大切だと思います。


辛いな、大変だな、と思いながらも、工夫して、試行錯誤をしながら前に進もうと努力しているときが一番成長している時

私は失敗を何度も繰り返して挫折をしてきましたけれども、振り返ってみますと、失敗してつらいなとか大変だなと思いながらも、それを乗り越えようと工夫して試行錯誤しながら努力して前に進もうとしている時が一番成長している時ということは間違いないですね。失敗した時はそれをうまく教訓として前に進めていただきたいと思います。失敗した時は実際、一番成長のチャンスだということを覚えていてほしいと思います。


行動で迷ったら、なぜこの勉強・仕事をしているのか、という根本の理由に立ち返って考えてみると、今、自分が取り組むべきことが明らかになる

勉強でも仕事でも迷ったら、なぜこういうことをしているのか、根本の理由にたちかえって自分でじっくり考えてみることで今自分が取り組まなければならないことは何かということが明らかになってくると思います。
苦労して失敗した時でも、こういったスタンスでものごとを考えていくと前に進むための新しい知見みたいなものがうまれてくるのではないかなと思います。


皆さん一人ひとりが、誰にも負けない素晴らしい力を持っている

最後に、皆さん一人ひとり気づいていない人も多いと思いますけれども、誰にも負けないようなすばらしい力を持っているかと思いますので、自分を発見して、自分の興味の対象は何なのか、自分は何をしたいのかということをしっかり見つけて、それをもとにして明確な目標をつくって前に進んでもらいたいなと思います。


[若田光一宇宙飛行士プロフィール]

JAXA 宇宙飛行士 若田光一 氏
昭和38(1963)年埼玉県生まれ。九州大学・大学院卒業。博士(工学)。JAXA(宇宙航空研究開発機構)所属の宇宙飛行士。初のスペースシャトル搭乗は1996年。合計4回の宇宙飛行における総宇宙滞在時間は347日8時間33分(日本人最長)。2013年末から2014年まで、国際宇宙ステーションに長期滞在し、日本人として初めてコマンダー(船長)を務めた。現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 特別参与・宇宙飛行士。



< 最後に >

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今回の講演会に参加された皆様からは、
「月面探査をするということは知っていいたが、ここまで内容が進んでいるとは知らなかった。」
「若田名誉館長にリモートの画面を通してだけど、お会いすることができて良かった!」
「素晴らしい経験をさせていただきました。」
「とても感動しました。」
「宇宙飛行士になりたいです!」
などたくさんのお声をいただきました。
また、今回のイベントでは、定員を大きく上回るお申し込みをいただきました。

ご応募いただいた皆様、ご参加いただいた皆様、訓練中でお忙しい中貴重なお時間をいただきご出演いただいた若田光一宇宙飛行士、開催にあたりご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。


< 福岡市科学館「若田光一名誉館長コーナー」のご案内 >

福岡市科学館の6階には「若田光一名誉館長コーナー」があります。
こちらのコーナーのテーマは「One Day at ISS」。
ISSでの1日をテーマに若田光一宇宙飛行士が宇宙で実際に使用されたものなどを展示しています。
若田光一宇宙飛行士が学生の頃に勉強されたノートなど、普段は見ることができないものもご覧いただけますので、ぜひお立ち寄りください。

[時間]開館時間に準じる
[場所]6階ホワイエ(6階ドームシアター横)
[料金]無料 ※入館料はかからずご覧いただけます。

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