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[天文トピック]七夕の星のオハナシ

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INDEX >>  七夕の星のオハナシ /  丹野佳代子プロフィール /  ドームシアター番組について 

七夕の星のオハナシ

梅雨明けが待ち遠しい今日この頃。
毎年この時期は7月7日の空模様が気になります。

「七夕の夜に降る雨」には「洒涙雨(さいるいう)」という呼び名があるそうです。
ようやく出会えた織姫と彦星が別れを惜しんで流す涙とも、会えなかった悲しみの涙とも。
アジアの別の地域では、出会えた2人の「うれし涙」といわれているそうです。
同じ涙なら、うれし涙のほうがよさそうですね。


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では、その織姫と彦星を実際の空で探してみましょう。
7月7日夜9時頃の東の空には、同じような色合いの明るい3つの星で形作られる、上向きに尖った「夏の大三角」が見えています。
この中で、一番高いところで輝いているベガ(こと座)です。
その下に輝く2つの星のうち、南寄りの星がアルタイル(わし座)、北寄りの星がデネブ(はくちょう座)です。
星の明るさとしては、ベガが最も明るく、次いでアルタイル、デネブとなりますが、いずれも1等星以上の明るさがありますので、街明かりの中でも見つけることができます。

この夏の大三角の星のうち、ベガが織姫星、アルタイルが彦星です。
そしてこの2つの星の間に、天の川が流れているはずですが、街明かりの中で見つけるのは難しいでしょう。
デネブを通り抜けて、織姫星・彦星の間を通り、南の空へと続いていく天の川。
空の暗いところに行ったときには、夏の大三角を目印にして淡い光の帯を探してみてください。

七夕の星たちは、7月7日にしか見えないわけではありません。
見える位置は変わっていきますが、12月頃まで見ることができます。
でもやはり、七夕の日に見たいというかたは、次の七夕を狙ってみてはいかがでしょうか。

七夕のお祭りは、元々は天保暦(いわゆる旧暦)の7月7日に行われていました。
それが明治時代になって現在のグレゴリオ暦(新暦)に改暦されたことによって、1か月ほど早い時期に祝うことになってしまったのです。
現在使われているカレンダーでの7月7日は、「新暦の七夕」です。
「旧暦の七夕」は、2023年は8月22日にあたります。
また、「月遅れの七夕」は新暦の七夕の1か月後ですので、毎年8月7日ということになります。
つまり、七夕は3回あるのです。
残り2回の七夕は、8月7日と8月22日(※2023年)です。
この頃には、梅雨も明けて季節も進んで七夕の星たちももっと高くのぼっています。
私には、はくちょう座の翼の星の並びが、天の川に架かる "かささぎの渡せる橋" (百人一首 6番)に見えるのですが、皆様、いかがでしょうか?
橋を渡る2人の姿を想像しながら星空散歩をお楽しみください。

(文:福岡市科学館 学芸員 丹野佳代子)


PROFILE

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丹野 佳代子 たんの かよこ
福岡市科学館 学芸員
福岡市科学館ドームシアターリーダー

佐賀県佐賀市⽣まれ。
佐賀県内公立学校で教鞭をとる。
佐賀県武雄市にある佐賀県⽴宇宙科学館の建設に際しては、プラネタリウム・天⽂台、宇宙関係の展⽰物の設計等をおこなう。
佐賀県⽴宇宙科学館開館後は、科学館に勤務し、宇宙チームのリーダーとして、プラネタリウムや天⽂台の運営、番組制作、教育普及活動をおこなう。
2008(平成20)年、天⽂教育普及に関する業績により、⼩惑星12411に「Tannokayo」と命名される。
佐賀県⽴博物館・美術館の学芸員を経て、現在は福岡市科学館に勤務し、ドームシアターリーダーとして、プラネタリウムの運営・番組制作等にあたっている。 豊富な知識をバックボーンとした⽣解説は、星の語り部として、全国にファンも多い。
プラネタリウム番組のナレーションや番組制作の監修も⾏っている。





ドームシアター(プラネタリウム)の番組内でも天文トピックを紹介しています


福岡市科学館では、個性あふれる解説員による生解説番組や音楽とコラボレーションした番組など、宇宙をより身近に感じられるさまざまなプラネタリウム番組の投映をおこなっています。一般番組には解説員による今夜の星空生解説があります。ぜひプラネタリウムでも天文トピックをお楽しみください。


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