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2024年 新年のご挨拶[館長 矢原徹一]


この度の北陸での地震で被災された皆様に慎んでお見舞い申し上げます。
余震が続く場合がございます。どうか引き続きご注意ください。


あけましておめでとうございます。
新年には、古くから七草がゆを食べる習慣があります。この習慣は、「若菜つみ」という日本の古くからの風習と、1月7日に7種類の野菜を使って汁物をつくる中国の風習が組み合わさったものです。6世紀以前の日本では「若菜つみ」のときに香の強いノビルを利用していました。しかし、香の強い植物を食べることを禁じる仏教が伝わった6世紀以後は、ノビルを食べなくなりました。このため「春の七草」にはノビルは入っていません。「春の七草」の中で、少し香りがあるのはセリです。しかしセリだけでは風味が弱いです。春の七草とともにノビルを入れると、ずっとおいしい「八草がゆ」ができます。ぜひ試してみてください。

さて、万葉の時代以来、セリもノビルも一種類の植物だと信じられてきました。しかし私は、野外観察とDNA研究を組み合わせて、セリもノビルも2種に分かれることを発見しました。さらに、日本全国を調査して、100種を超える新種を発見しました。牧野富太郎のふるさと高知県からも、観賞用に栽培されるギボウシ属の新種を5つ発見しました。舞鶴公園にも、ツクシセントウソウという新種が生育していることがわかりました。ごく身近なところにも、科学的な発見の種が眠っています。今年も福岡市科学館の活動を通じて、科学の楽しさ、面白さを紹介していきたいと思います。

昨年は、ChatGPTというAIが急速に普及しました。しかし一年前のChatGPTは、文章は上手でも事実確認が甘く、平気でウソをつくAIでした。一年たって、どれくらい正確な回答ができるようになったでしょうか?「春の七草」について、尋ねてみました。ChatGPTの回答は「せり、すずな、 なずな、ほとけのざ、すすき」・・・ダメですね。すすきは秋の七草です。このように事実確認に使うにはまだ信頼がおけませんが、翻訳、文章校正、プログラミングのチェックなどでは、とても便利なツールです。福岡市科学館でも、AI技術の進歩を取り入れて、その活用法を紹介していきたいと思います。

今年も福岡市科学館をぜひご利用ください。

福岡市科学館 館長 矢原徹一