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[天文トピック]星空のキャンバスに描かれた彫刻室

天文トピック


福岡市科学館では木彫りアーティスト・キボリノコンノさんの作品を楽しめる、あっと驚き、ちょっとほっこりする体験型の展覧会 特別展「キボリノコンノ展」を開催中です。

「彫刻」といえば、こんな星座があることをご存知ですか。

「ちょうこくしつ(彫刻室)座」
「ちょうこくぐ(彫刻具)座」

なんともマニアックな星座?!
これらの星座には明るい星がなく、日本では観察ができる高度が低いため、初めて耳にした方も多いかもしれません。


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星座には、彫刻以外にも「けんびきょう座」や「コンパス座」、「とけい座」といった、身近にあるものをモチーフにした星座もあります。
個性あふれる星座がありますが、そもそもこれらの星座はどのようにして決められたのでしょうか。



星座はいつ決められたの?

いにしえの人々にとって星空は、方角や季節を知るための大切な目印でした。輝く星々をたよりに航海をしたり、穀物の種まきや収穫をしたりと生活には欠かせない存在だったのです。

人々は星空をキャンバスに星と星をつなぎ、身近なモチーフなどに見立て、星の並びを覚えていきました。これらが後に決められた「星座」のタネとなりました。

皆さんは、現在「星座」がいくつあるかご存知ですか?

その数は、88個。
星座が88個に決められたのは、100年程前のことで、人類の歴史を考えると、わりと最近のことなのです。
20世紀初頭までは「星座」の決め方の世界共通ルールがなく、数も名前も空での範囲も、時代や人により異なっていました。
そのため、次々と星座がつくられて混乱が起こり、1919年には世界中の天文学者から成る国際的組織「国際天文学連合(IAU)」が発足します。IAUの最初の任務の一つとして、乱立状態にあった星座の整理とその境界の合理化が掲げられました。

1922年 第1回総会:整理された88のラテン語での星座名と略号について合意
1925年 第2回総会:星座境界線の提案
1928年 第3回総会:第2回の内容の採択
1930年 ケンブリッジ大学出版会から出版物として刊行
『Délimitation Scientifique des Constellations』
(「星座の科学的境界設定」の意味)

国際天文学連合(IAU)総会で議論され、1928年(昭和3年)に現在の88個の「ラテン語での星座名」が、そして1930年(昭和5年)にすべての星座境界線が確定したことになります。日本語での星座の名前が決まったのは、もう少し後のことです。


この時に、「ちょうこくしつ(彫刻室)座」と「ちょうこくぐ(彫刻具)座」も選ばれました。
88の星座の中に「彫刻」に関する星座がふたつも入っているのですね。

星座と聞くと、古代ギリシャ神話のような物語をもつ星座の印象が強いかもしれませんが、近代に新設された星座には、神話に基づかない、芸術や科学技術をモチーフにした星座もあります。「ちょうこく座」と「ちょうこくぐ座」もそのひとつです。

当時の人々にとって「彫刻」や「彫る」という行動が今よりも身近なものだったのかな...、どうして彫刻に関係する星座が2つも選ばれたのかな...なんて、ふしぎや想像がふくらみますね。


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ちょうこくしつ(彫刻室)座

「ちょうこくしつ座」は、フランスの天文学者ラカイユが新設した14の南天の星座のひとつで、彫刻家のアトリエがモチーフとされています。

「ちょうこくしつ座」は、くじら座の南側、みなみのうお座の東側に位置する、東西に長い星座です。
日本では秋の夜、南の空低い位置に見られる星座ですが、福岡での南中高度は20度から30度ほどで、明るい星がなく、観察の難易度は高めです。


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星座絵では、脚つきの台の上に胸像と道具[鏨(たがね)、槌(つち)]が置かれています。
彫刻の作品づくりをすすめているアトリエの様子が描かれていますね。

星は暗めで観察が難しい「ちょうこくしつ座」ですが、近くには美しい「NGC253」という渦巻銀河があり、日本でも南の地域で条件がそろえば、天体望遠鏡などを使うと観察ができるかもしれません。

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ちょうこくぐ(彫刻具)座

こちらも、フランスの天文学者ラカイユが新設した14の南天の星座のひとつです。
はと座の西側にあります。

日本では冬、南の空低い位置に見られる星座ですが、福岡での南中高度は10度から30度ほどで、ちょうこくしつ座と同様に明るい星がなく、観察の難易度は高めです。


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星座絵では、一見はさみのようにも見えますが、はさみではなく、彫刻でつかう道具「鏨(たがね)」が描かれています。2本の鏨が交差し、リボンのようなもので結ばれていますね。



豊かな想像力で広がる世界

今回は特別展「キボリノコンノ展」開催中ということで、彫刻に関連した星座をご紹介しました。
想像力をはたらかせて夜空をキャンバスに絵を描く...いつも身近なものを観察して想像力をはたらかせて作品づくりをしているキボリノコンノさんと通じるものを感じ、今回の天文トピックをお届けしました!

空を見上げると、さまざまな満天の星が輝いています。
ドームシアター(プラネタリウム)では、天候に関係なく、星空を楽しむことができます。
星空を観察して気になったふしぎは、プラネタリウムやサイエンスナビの書籍・映像などで、ぜひ深掘りしてみてください。

また、特別展「キボリノコンノ展」は11月9日(日)まで開催中です。キボリノコンノさんの作品を通して、観察すること、考えること、想像することの大切さを体感してみてください。






\ 11月9日(日)まで開催 /

特別展「キボリノコンノ展」

キボリノコンノ展

かた一い木なのに、柔らかそうにも、透けているようにも、美味しそうにも見えてしまう不思議な木彫りたち。木彫り作品を見て、撮って、触って、探して・・・
今話題のクリエイターがおくる、あっと驚き、ちょっとほっこりする体験型の展覧会です。キボリノコンノ作品を通して、ものづくりの楽しさはもちろん、観察すること、考えること、想像することの大切さを体感してください。
[期間]2025年9月13日(土)~11月9日(日) ※毎週火曜日休館 火曜日が祝日の場合は開館し、翌平日を休館 [時間]9:30~18:00 ※入場は17:30まで [場所]福岡市科学館 3階 企画展示室