[レポート]走る『ウマ』のアニメーション装置をつくろう!
企画展「組みかえてつくる!わたしの家~KUMICAであそぼう~」の開催を記念して、2026年2月23日(月・祝)にうさみたけしさんをお招きして、関連イベント「走る『ウマ』のアニメーション装置をつくろう!」を開催しました。当日の様子をお届けします。
企画展の会場の様子(5階オープンラボ)
アイデアをかたちにしよう
「組みかえてつくる!わたしの家~KUMICAであそぼう~」は、建築挿し木玩具「KUMICA(クミカ)」を自由に組みかえながら、ワクワクする造形を生み出す体験型の企画展。福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボ「anno lab(あのラボ)」企画・協力のもと開催しています。
ウマの動きが見えてくる
-まわして気づくアニメーション工作-
「組み立てる」面白さは建築に限らず、私たちの身近にあふれています。今回の関連イベントは、同じ「組み立てる」でもアニメーションが切り口。福岡市科学館のコンセプトである「サイエンス&クリエイティブ」を軸に、科学と感性の視点から構成したものです。目指したのは "工作の完成" ではなく、「生きものの動き」や「動きの見え方」といった身近な現象への気づきです。体験を通して世界の見え方が少し変わり、思わず観察したくなる--そんなきっかけを届けたいと考えました。サイエンスとアートの垣根を越え、クリエイターと対話しながら、ひらめきをかたちにする。そのプロセスそのものを楽しむワークショップです。

− 見えない速さを、見える動きに −
まずは、好奇心を刺激する導入トークの時間。大学生の頃からウマの探究を続けている、当館サイエンスコミュニケーターのハリーこと針谷亜希子がお話ししました。

ウマの走り方とヒトの目の特性
ウマが走る時、前脚・後脚はどのような動きをしているのでしょうか。
「考えたこともない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
19世紀に描かれた絵画と写真を比較しながら、クイズを交え、皆でウマの脚の動き方について考えました。

1821年に描かれた当時、走るウマは前脚を前へ、後脚を後ろへ伸ばした状態で空中にいると考えられていたようです。ところが、1878年に撮影された自動電気写真による連続写真からは、ウマが空中に浮いている時には、前・後の脚は曲がり、体の下に集まっていることがわかりました。動きが早すぎて、ヒトの目では細かな動きまでは捉えられなかったのです。
ヒトの目では見えない小ささがあるように、ヒトの目では見えない速さもあります。現代では、ハイスピードカメラの開発により、走るウマの動きを細かく観察できるようになりました。前脚でかじを取り、後ろ脚で地面を力強く蹴り上げ推進力を出す様子まで、はっきりと捉えることが可能になりました。カメラなどの科学技術がヒトの目の限界を超えて世界を見せてくれています。
ハリーは「私たちの目は完璧ではありません。でも、その特徴を使うと"動き"をつくることができます。ヒトの目が速い動きを正確に見られない性質をうまく利用して、4枚の絵から"走って見えるウマ"をつくりましょう。」と参加者に語りかけました。

ウマが大好きなハリー(ウマ好きな方は館内で見かけたらぜひ話しかけてみてください!)
< ハリーからのヒント >
・前と後ろ、右と左など「脚の色」をぬり分けると、動きが見やすくなるかも!
・走っているときに風になびく「たてがみ」や「しっぽ」の形を工夫すると速さがあらわせるかも!
くるくるアニメーション装置をつくろう

科学の視点を得たあとは、いよいよアニメーション装置づくりの時間。講師は、anno labのメンバーで、福岡市科学館の展示「発見の壁」や「進化の箱庭」などの制作にも携わり、さまざまなあそびのデザインをしている、アニメーション作家のうさみたけしさんです。はじめに全体の流れをご紹介いただいたあと、アニメーション装置づくりがスタート。

\ こうやってつくったよ /

まずはイメージを膨らませます。なかなか頭に浮かんでこないときは、まわりの人と話したり、ものづくりやウマに関する書籍をヒントにしたり。イメージが湧いてきたら、4コマ形式の台紙に、自由に色や線をのせていきます。
※今回のワークショップでは、事前に薄くウマの下絵を印刷した台紙を使用しています。

今回ご用意した描画材は、パステルや色鉛筆、カラーペンです。多様な質感の描画材から、楽しそうに選んでいた子どもたち。夢中で制作を進めていました。(想像していた以上に、皆さん集中モードでした!)

体毛1本1本を丁寧に描き込んだ線、リズミカルな線、風にそよぐような曲線、力強くふち取りられた線、世界地図のような大胆な模様、たてがみが大きくなびく疾走感たっぷりの表現...一つとして同じものはありませんでした。

ウマの表現以外に、背景描写やストーリー設定に工夫を凝らしていた参加者も。
雲、太陽、空の色、月、星などの描写で時間帯や時の経過、天候を表現したり、富士山の上をペガサスが飛行する風景を描いたり、ウマの脚元に花や草を描いて動きや植物の生長を表現したり、地面からミミズが頭を出して驚いているストーリー性をもたせたり、草が生長する様子を描いたり...さまざまな工夫が見られました!

もっとよくするには?
うさみさんが開発して試作中のアプリをお持ちいただき、タブレットに描いた絵のデータを読み込み、動画にして動きを確認することができました。

それまで静止していたウマが動き出すワクワク感で、心もさらに動き出すーー動画にすることで生まれた気づきを作品づくりに反映させていた参加者の皆さん。

< 参加者の反応 >
・「すごいよ走ってる!」「本当に動いているみたい」など驚きの声が次々とあがっていました。自分以外の作品にも興味津々の皆さん。お互いの作品を見ることで、感性が刺激されていた様子。

・「うまく描けなかった...」と肩を落として自信なさげに絵を差し出す参加者も数名。ところが、ひとたび動画にしてみると、作品の印象が一変!動き出した作品とともに、参加者の表情もぱっと晴れやかに変わっていきました。表現方法により見え方が変わることを体感してもらえたようで、表現の魅力を改めて感じる瞬間でした。また、その逆のパターンで、動かしてみるとイメージと違っていたという参加者も。動かしてみることでひらめきが生まれ、試行錯誤する。疑問をもち、仮説を立て、実験し、考えを深めていく。そのプロセスは、科学の考え方にもつながりますね。

・「アドバイスをください」と積極的に声をかける参加者も。アニメーション作家の方と直接お話をする機会がなかなかないということで、うさみさんとの対話を楽しんでいるようでした。
<作品(一部)>


個性豊かな参加者オリジナルのウマ作品。

科学館スタッフもサポートしながら、土台と絵のパーツを組み立てていきます。

手でまわしたり息を吹きかけたりして、何度もくるくる回しては楽しんでいた子どもたち。回転するスピードを変えて、見え方の違いも観察していました。

体験を通して、絵が少しずつ動いて見える"しくみ"にも自然と関心が向いていた様子。
「今度はちがう絵を描いて動かしてみたい」という声もきこえてきました。

参加者の作品の一部。回転部分だけでなく、土台部分まで工夫している参加者も。


参加者の感想(一部)
<小学生>
・色を好きなようにぬるのが楽しかった。
・アニメーションをつくるときに最初の絵を描いてから本物と同じように動いたこと。
・まわると走ってみえるとこ。
・前脚、後脚を工夫してかけたこと。
・ウマが動くところが面白くってきちょうなたいけんになりました。もうちょっとさんかの時間をのばしてほしいです。
<保護者の方>
・本物のウマの動きを見て、作業に入ることで動きに思いをのせることができたのかなと思います。
・子ども自身が制作したアートが実際にアニメーションで見られるところや動きの解説もよかったです。
・工作など楽しいイベントでよかったです。アニメーションは初めての試みでしたし、ウマの走り方を習えてよかったです。
・発見の壁のアニメーションを考えられた先生と話すことができて息子がよろこんでいた。すごい人としゃべれたと言っていました。
・子どもが熱心に取り組んでいました。
・子どもが真剣に頑張っていた。
・アプリで確認をして改善できるシステムがよかった。
・映画ってどうやってできているんだろうということがわかる面白いテーマでした。
・アニメーションのしくみがわかり、とても楽しい学びでした。
・他の子たちの作品が見られて、みんないろんな発想でつくっていて楽しかった。
・色えんぴつだけでなくペンなどいろいろなツールで描けるのがよかった。
・手を動かしてものをつくった点がよかった。
・足の動かし方の本がよかったです。
・さまざまな動物の脚のうごきを調べるキッカケになった。
・自由に集中させてくれたところがよかった。
・スタッフの方も先生もとても親切で楽しいものが作れて良い休日になりました。また参加したいです。

ものづくりの楽しさだけでなく、アニメーションの原理にふれるひとときとなった今回のイベント。「ヒトの目の性質」や、アニメーションの背景にある「動いて見えるしくみ」といった科学の視点とともに、体験いただきました。ぜひ、身のまわりの「動き」を観察したり、ウマ以外のモチーフでもアニメーションをつくってみてください。
ご参加いただいた皆さま、うさみさん、ありがとうございました。
つくり方の動画
anno lab 公式 YouTubeで、くるくるアニメーション装置のつくり方の動画が公開されています。また、詳しい作り方もanno lab公式WEBサイトで紹介されています。
詳細はこちら(anno lab 公式 WEBサイト)
企画展「組みかえてつくる!わたしの家~KUMICAであそぼう~」

アイデアをかたちにしよう!
建築挿し木玩具「KUMICA(クミカ)」を自由に組みかえながら、 ワクワクする造形を生み出す体験型の企画展です。理想の家や、あっと驚く乗り物、不思議なかたちの建物まで、ぜんぶあなたのアイデア次第。
「知育おもちゃ」というと、こども向けのイメージが強いかもしれませんが、KUMICAには、大人も思わず夢中になってしまう面白さがつまっています。思い思いの形を組み上げていく体験を通して、ものづくりの楽しさや奥深さを自然と感じられるはず。
決まった正解はありません。
ぜひ会場で、自由にアイデアをかたちにしてみてください!
KUMICAとは?
KUMICAは、組みかえて遊べる建築知育玩具。anno lab(あのラボ)が手がける知育玩具シリーズです。名前の由来は、手で「組み」(KUMI)立てる「カード」(CARD)。板状のパーツに入ったスリット同士を手で差し込んでいくことで、自由に立体作品づくりを楽しめます。
企画展「組みかえてつくる!わたしの家~KUMICAであそぼう~」
2026年2月14日(土)~2026年3月2日(月) / 9:30~18:00 / 福岡市科学館 5階オープンラボ / 無料
福岡市科学館 4階 サイエンスナビ

ものづくりや錯視、アニメーション、ウマ、動物のからだについて「もっとしりたい!」と感じたら、ぜひ調べてみてください。福岡市科学館4階のサイエンスナビで深掘りしてみませんか。
福岡市科学館 4階 サイエンスナビ / 9:30~21:30 / 無料
