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【レポート】「くらしを支える地下のまちづくり~福岡市の地下水道ネットワークに迫る!~」サイエンスカフェ開催

2017.01.28

【レポート】「くらしを支える地下のまちづくり~福岡市の地下水道ネットワークに迫る!~」サイエンスカフェ開催

2017年10⽉、六本松にオープンする福岡市科学館。

たくさんの方に科学を身近に感じてもらうため、福岡市科学館を盛り上げるネットワーク企画のひとつとしてサイエンスカフェが始まりました。サイエンスカフェでは月に1〜2度、福岡の課題を解決するために活躍されている方を講師に招き、トークセッションや講演を行っていきます。

1月28日(土)、The Companyにて開催された第2弾サイエンスカフェのテーマは"下水道"。

福岡市役所道路下水道局の野口さんを講師に招き、身近な存在ながらあまり知られていない下水道と、その建設を担う土木にまつわる参加型トークセッションが行われました。イベントの内容を一部抜粋してレポートします。

「水を使うこと=下水道を使うこと」。普段あまり意識することはないのですが、洗顔、料理、洗濯、トイレ、洗い物...など、毎日の生活の中で使った水を流す場所として、下水道はなくてはならない存在です。

福岡市で1日に1人が使う水の量は、1リットルの牛乳パック200本分と言われています。福岡市全体では、1日に25mプール1600杯分もの水が使われているそうです。毎日それだけの大量の水が処理され、浄化されて川に戻されています。

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下水には、生活排水などの「汚水」と「雨水(うすい)」の2種類があります。地中のあちこちに下水道管が張り巡らされ、市内の下水道管をすべて繋げると、全長はなんと7000キロ!福岡からイランまで届いてしまう計算です。

下水道管を適切に維持管理するため、市内のあちこちに設置されているマンホールの数は148500個!マンホールの蓋のデザインで汚水用の下水管なのか雨水用なのかを見分けられるようになっており、蓋の縁に沿うように配置されている点が「●(丸)」であれば汚水用、「■(四角)」であれば雨水用だそうです。街中でついついマンホールを探してみたくなりますね。

福岡市では過去に博多駅が浸水するといった大きな水害が起きていました。そのため、大雨が降っても街が水浸しにならないよう、雨水用の下水管や一時的に雨水を溜め込む施設をつくり、街を水害から守っています。

また、下水を有効活用するさまざまな取り組みも行われています。街中のトイレの洗浄水に再生水を使ったり、下水を処理した際に発生するガスを用いてバイオマス発電を行い、処理場でのさまざまな設備を動かす電気として使用したり、ガスを利用して水素をつくり出し、水素自動車用の水素エネルギーを供給したりもしています。日本全国で水素自動車を使用したタクシーは7台あるそうですが、その内の5台が福岡の街を走っているそうです。

生活に欠かせない下水道をつくるのは土木のお仕事。しかし、地中にあるため見えにくく、また、身近過ぎる存在であるために、事故があった時にしか表立って取り上げられず、一般的には悪いイメージがあるかもしれません。

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下水道の工事には、シールド工法というシールドマシンと呼ばれる筒状の機械で土の中を掘り進めていく方法が用いられています。地中には見えないながらさまざまなインフラが埋まっているため、地中のどこにどんなインフラがあるかを記した台帳や、複数のモニターに表示される土の圧力や地下水の圧力といった数値的な情報を頼りに、想像力を働かせて慎重に掘り進めていきます。失敗の許されない責任の大きな仕事なので、順調な時でも1日10mほどしか掘り進められないそうです。

土木が現在抱えている問題は、今後大量のインフラストックが更新時期に入ること、そして入職者の減少による担い手不足。

下水道管の寿命は50年と言われていますが、下水道管は大きく、また地中には下水道管以外にさまざまなインフラが埋まっているため、交換することは容易ではありません。現在は老朽化した下水道管の中に新しい道管をつくるというやり方で、対応が行われているそうです。

また、入職希望者を増やすため、PRポスターの作成、見学会の開催、施設活用による事業PR、SNSによる情報発信など、下水道と土木について広く知ってもらう機会を積極的に設けています。

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土木を英語で「Civil Engineering」表わされます。直訳すると"市民のための技術"という意味です。土木の仕事は、"当たり前のことが当たり前にできるためのモノづくり"なので、普段その存在を意識することは少ないですが、ひとたび災害や事故が起きるとその大切さに気付かされます。

皆の生活を陰ながら支え、まちをつくる土木の仕事。その魅力やカッコよさを多くの人に知ってほしいと野口さんはおっしゃっていました。
具体例や豆知識を交えながらの、下水愛あふれる野口さんのお話はとても興味深く、参加者のみなさんは熱心に聴き入っていました。そして質疑応答タイムにはたくさんの質問が集まりました。

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下水道のメンテナンスはどのように行われているのか、マンホールの蓋のモチーフは何をイメージしているのか、映画のように実際に下水道を逃走ルートとして使うことは可能なのか...などなど、さまざまな視点からの質問があり、下水道に対するみなさんの関心の高さが伝わってきました。

下水道とはどんなものなのか、どのように私たちの生活を支えてくれているのかを知ることで、ひとりひとりが生活を見直すひとつのきっかけになるかもしれません。

例えば20mlの油を下水道に流してしまうと、その水を浄化するために浴槽20杯分もの水を必要とします。油が蓄積することで下水道管が詰まってしまうこともあります。油や汁物などはそのまま流さず、紙や布などに染み込ませて可燃ごみとして捨てる。知らずにしてしまっていたことも、知識さえあれば今後は変えていくことができます。まずは"知る"ということ、それがとても大切ですね。

今後もサイエンスカフェではさまざまな講師を招き、皆さまに科学と親しむきっかけづくりを行っていきます。

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Mariko Tokita
ライター

2014年に東京から福岡へIターン。デザイン事務所広報・Webメディア運営を経て、現在は文具・雑貨メーカーの広報とライター業を行う。旅行と食べ歩きと映画が好き。