サイト内検索

【レポート】「シビれた脳はどこに向かい、何を教えてくれるのだろう」サイエンスカフェ開催

2016.12.26

【レポート】「シビれた脳はどこに向かい、何を教えてくれるのだろう」サイエンスカフェ開催

2016年12月26日(月)19時より、サイエンスカフェ「シビれた脳はどこに向かうのか ~進化する心理学の今後を伝える~」をBIZCOLIにて、開催しました。今回は、その開催レポートをまとめました。

2017年10月、六本松にオープンする福岡市科学館では、科学者とさまざまな市民をつなぎ、科学を楽しむネットワークを作っていくことを目指し、科学技術振興機構の支援を受け、サイエンスカフェとWebメディアをはじめました。

サイエンスカフェとは、研究者と市民が、科学について深く知ることを会話することを目的とし、1998年、英国にはじまったと言われています。

今回、福岡市科学館ネットワークで運営をおこないますサイエンスカフェは「○○ × 科学 × 本」というテーマで、毎回さまざまなゲストを招き、科学の研究内容のほか、著書やいまの職業にすすむきっかけになった一冊を紹介していきます。また特徴として、科学者以外のゲストにもお声掛けし、さまざまな方をつなぐ機会にしていきます。

content_f5dc4a406f.JPG



その第一弾として、サイエンスカフェ「シビれた脳はどこに向かうのか ~進化する心理学の今後を伝える~」をBIZCOLIにて、開催しました。

今回の講師は、九州大学にて心理学を研究する妹尾武治さん、司会進行・ナビゲーターに、花井裕一郎さんにお越しいただきました。

第一弾のテーマは、「心理学 × 科学 × 本」とし、前半は研究事例の紹介を、後半は妹尾さんの著書よりくらしに役に立つ心理学のトピックをまとめてご紹介しました。

さて前半は、妹尾さんの「ベクション」研究のご紹介より会はスタート。ベクションとは、視野を一様な運動刺激が占める場合に、実際には静止しているにも関わらず、自己身体に錯覚的移動感覚が生じる現象のことで、 縞模様が横に流れたり、奥に流れると、体が流れる方向に動くような感覚というものです。

content_f3a6a45cbe.JPG



たとえば、電車が行き違うとき、自分が乗車している電車の窓を見ていると、変な感覚になりますよね。このほかに、最近の事例では、アミューズメントパークのアトラクションの映像や、さまざまな映画やテレビ番組のワンシーンで用いられているようです。

例えば、アニフェスにも参加され、ベクションについてのアンケートを実施したり、VRを用いた地震の近くにおける実験Virtual Earthquakeを開発されたりと、ベクションの認知普及と、活用実験なども精力的におこなっておられています。

最近の研究事例は妹尾さんの研究室Webサイトをご覧ください。

後半は、心理学のトピックを中心に参加者とのディスカッションでの進行。たくさんの話題の中から2つをピックアップします。

content_ca808634cc.JPG



「赤い服はモテる!?」
女性の見た目で、赤の枠で囲われた写真と、白の枠で囲われた写真では、赤の枠が好まれる傾向であることや、他の色と比較したアンケートで、赤が選ばれる結果があり、そこから赤い色は好意を持たれやすいということです。

考察でのお話もありましたが、生物学的な進化の歴史や、赤色は生殖可能なシグナルとしてあることも背景につながっているのかもしれません。

「自由意志」
人は、自分の意志で行動しているのか、無意識のうちに行動をしているのかなど、本当に不思議ですよね。

Aさん「腕を上げてみて。」
Bさん「はいよ。」
Aさん「じゃあ、腕を上げずに、腕を上げる意思だけ持ってみて。」
Bさん「はいよ。」
Aさん「いま、君の頭に描かれたのは本当に腕を上げる意思なの?」

本当に自由意志はあるんでしょうか。

さて、この課題について、サンフランシスコ大学の生理学者、ベンジャミン・リベットさんの研究を中心に解説いただきました。自由意志に関する実験がおこなわれ、行動をする約0.5秒前には、脳内の準備電位が検出される結果となりました。無意識のうちに、意思する前に脳が働いていることがわかりました。

サイエンスカフェの後、いろいろ調べてみたところ、自由意志は存在するなどの議論はまだまだ続いているようです。

参加した感想として、本当に、あっという間でした。
上記の話題のほかに、「父親に似た人と結婚する?」「卒業アルバムで離婚が予測できる?」「犬と人間の伝搬、あくびがうつる」など、興味深い内容がたくさんあり、充実した1時間半でした。

発表スライドの中に、心理学の意義、魅力として「これまでに無かったデータを世の中に提示する」という言葉があり、研究という視点での心理学では、データを取得・分析をしてまとめていくことにも驚きでした。

心理学の検証に、最近は、VRが用いられていたり、感覚地ではなく実験と分析がおこなわれていたりと、書籍やテレビで見る心理学とは違い、研究という視点での心理学を掘り下げていくと、普段味わうことのない心理学を体感することができました。

content_826a4d6f45.JPG



また、当日は雨天にもかかわらず、定員を超える多くの方々にご参加いただき、期待の高さを感じました。
このようなサイエンスカフェを通じて、これまでの科学の印象が少しでも変わり、大人も子どもも学べる未来が広がっていくのかもしれません。
また、次回も本当に楽しみです!

thumb_mini_f85ee77cbb.jpg
Yusuke Matsumoto
ライター

2011年より、サイエンスコミュニケーションプロジェクトRikafanを立ち上げ、科学コミュニティの活性化に努める。現在は九州大学に所属しサイエンスコミュニケーションの研究を、また、福岡市科学館開館準備室ではVI、広報を担当。プライベートワークとして、だれでも参加できるものづくり博覧祭つくると!のコミュニティ代表として、パーソナル・ファブリケーションに夢中な仲間とものづくりの未来を考える。