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【レポート】ボルネオ島の自然を福岡で守る。

2013.01.26

【レポート】ボルネオ島の自然を福岡で守る。

ボルネオ島の自然が危機的状況にあることを僕が知ったのは2012年のこと。

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ボルネオ島は3カ国にまたがり、北東部はマレーシアのサバ州、サラワク州、ブルネイ、南側はインドネシア(東カリマンタン州・西カリマンタン州・南カリマンタン州・中央カリマンタン州)に分かれる。赤道直下にあり、面積は約74万平方キロメートル(日本の2倍)で、世界で3番目に大きな島(1番目はグリーンランド、2番目はニューギニア島)。 熱帯雨林気候で、平均気温は年間通じて25~30度。年間降水量は3000~4000mmといわれる。熱帯雨林は生物の生産性が高く多種多様な動植物が生息し、生物多様性の最も豊かなエリアと言われる。ボルネオオランウータン、テングザルなどボルネオ固有種も多い。しかし、木材伐採、その後のアブラヤシプランテーションへの転換などで、熱帯雨林はどんどん減少し、生物多様性も失われつつある、という。 (ボルネオ保全トラストジャパン参照)

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アブラヤシというと馴染みが薄いように思えますが、私たちの身の回りでは「植物油」「パーム油」などの商品表示は意識してみるといたるところにあります。例えば、カップラーメンやカレーのルー、シャンプーを始めとする洗剤、バイオ燃料など、生活には欠かすことが出来ない存在なのです。(ここで注意いただきたいのは決して体に悪いものではありません。)いたるところに使われるということは消費も多く、その結果、熱帯雨林は減少につながっています。

豊富な自然が消えるということは、その地域に生育する動物たちが生活できなくなることにつながり、ボルネオの固有種であるオランウータンやボルネオゾウなどが絶滅危惧種となっているのです。一見、世界で起きていることに思えますが、僕たちの生活に直結していること、身近な問題のひとつなのです。ボルネオ島の情報は普段の生活の中でメディアも情報発信することはなかなかありませんので、意識することは難しいですよね。

世界的に昔から繰り返すのは「資源」における問題。石油や石炭、水や森、自然を加工して生活が豊かになるけど、オゾンホールが出来たり海水が上昇したり、熱帯雨林が無くなりつつあったり繰り返してしまう。その振り返りを忘れてるという共通点はあります。

このような危機的状況を改善すべく、ボルネオ保全トラストジャパンさんが様々な活動を通じて、自然への恩返しを進めていらっしゃいます。実は旭山動物園園長坂東さんもその組織に所属し講演活動などでも自然の大切さを伝えていらっしゃいます。
2012年、旭山動物園園長坂東さんよりお仕事を通じてこのボルネオ島の現地の状況や活動を直接お聞きしました。ボルネオへの関心が湧き、2013年1月に東京出張の際、ボルネオ保全トラストジャパンさんに伺い活動についてもより深めることが出来ました。

ボルネオ保全トラストジャパンの活動

1.ボルネオ緑の回廊をつくる活動(カンバッチ募金、パネル展)
2.オランウータンのための吊り橋プロジェクト
3.野生生物レスキューセンター(ボルネオへの恩返しプロジェクト)
4.広報・環境教育(月例会、講演会、ワークショップ、イベントなど)

そしてなんと、2013年9月19日にボルネオに野生生物のレスキューセンターが開設しました。この記念式典にはマレーシアの大臣を始め、建設にかかわった多くの方が参加されました。今回のレスキューセンターの機能はボルネオゾウの一時的な保護施設。今後はその他の動物の施設も開設が予定されているようです。

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さて話は変わり、福岡では、福岡市動物園が60周年記念ということで、2013年9月21日、リニューアル第一弾「アジア熱帯の渓谷エリア」が全面オープンしました。このエリアにはアジアゾウを始め、ボルネオオラウータン、チータ、ビントロングなど、熱帯地域に住む動物たちが「行動展示」という形式で楽しむことが出来ます。

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たとえば、ボルネオオラウータンが氷を食べてたり、

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チータの寝そべっている姿を下からのぞけたり、

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シシオザルが「やあ」と話しかけてきたりと動物と対話してるような気持ちになります。これは行くしかありません!!

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そんな「アジア熱帯の渓谷エリア」を抜けた先に、お手洗いと併設したキリンの自動販売機が3台な並んでいます。

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これが今回伝えたい事。この自動販売機で飲料を買うと、その一部がボルネオの活動へ寄付されるというもの。おそらく九州では初めてとなります。旭山動物園がある北海道を中心に設置されており、動物園として自動販売機を設置したのは、3つ目だとお聞きしました。また3台並んで設置されたのはおそらく日本で初めてかもしれません。その自動販売機の表示はこのように記載されています。

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ボルネオ島の自然を福岡にいながら守るお手伝いが出来るようになりました。
微力ながら、僕は大人なのでキリンレモンを買いました。

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この自動販売機の式典後、旭山動物園園長坂東さんが囲み取材を受けていらっしゃいました。

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最後に、
坂東さんより以前お聞きした話で、"数年前、大好きだったカップラーメンをやめた"そうです。これは旭山動物園の職員の皆さんも同じく、袋のお菓子やファーストフードなどを一人一種類食べるのをやめたそうです。今回の活動は一気にやめる感情的なことではなく、人間がお世話になっている「パーム油」しいては「ボルネオ島の自然」に感謝し「恩返し」をしていく。そして動物たちを守っていく「種の保存」につながっていきます。すぐに「パーム油」を止めることは難しいけど、なにか身近な生活でひとつでも我慢したり協力したりすること。それが今からの社会を変えていくのではないでしょうか。

<あとがき>
今回投稿するまでに2012年より構成を練っていました。一方的な発信ではこれまでのメディアと何も変わらないと思い書くことを止めていました。2か月前の2013年7月14日、福岡市動物園にて坂東さんと動物園広報担当職員さんとお話し伝えることにしました。やっと僕の思いの一つを伝えることができました。そして、今日から僕は「袋のお菓子」を極力控えますし、福岡市動物園に行ったらこの自動販売機でジュースを飲みます。強制的ではなく、「共生的に」、この活動を引き続き楽しんでいきます。

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Yusuke Matsumoto
ライター

2011年より、サイエンスコミュニケーションプロジェクトRikafanを立ち上げ、科学コミュニティの活性化に努める。現在は九州大学に所属しサイエンスコミュニケーションの研究を、また、福岡市科学館開館準備室ではVI、広報を担当。プライベートワークとして、だれでも参加できるものづくり博覧祭つくると!のコミュニティ代表として、パーソナル・ファブリケーションに夢中な仲間とものづくりの未来を考える。