[レポート]宇宙×音楽プログラム『COSMIC DANCE』の取り組み
福岡市科学館の取り組みである、地元クリエイターと創り出す、宇宙×音楽プログラム『COSMIC DANCE』について、『プラネタリウムの価値や役割 = The role and value of planetariums in Japan』(五藤光学研究所刊行、2025年5月)に寄稿しました。掲載内容について、ご紹介いたします。
※2025年8月2日(土)に開催するSTARRY NIGHT JAM vol.133「夏休み特別企画プラネタリウムでスペースアドベンチャー! by COSMIC DANCE」の詳細はこちらをご覧ください。
サイエンス&クリエイティブFUKUOKA
人が育ち、未来をデザインしていく科学館
福岡市科学館(以下、当館)は2017年(平成29年)10⽉、九州⼤学教養部キャンパス跡地に開館した。福岡市の持つポテンシャルを最⼤限にいかし、科学と感性を融合させた新しい活動展開を⾏うとともに、科学館を拠点とした福岡における新たな交流と⼈材育成を図り、福岡の⼈々とともに未来の福岡と地球環境を共に創造していく「未来創造型のミュージアム」をめざしている。複合ビルであり、3階から6階が科学館で、階下にはスーパーマーケットや書店などが⼊居している。
プラネタリウム(ドームシアター)では、開館以来、様々な番組やイベントを通して、幼児から⼤⼈まで幅広い年代が科学の関⼼を深めることができるプログラムの提供をおこなっている。通常投映としては、①学習番組(福岡市⽴⼩学4年⽣対象)、②当館オリジナル制作番組『宙語り』、③⼀般番組(⼤⼈向け・⼦ども向け)があり、解説員による星空のライブ解説と共にお楽しみいただいている。また、スペシャル投映として、アーティストとのコラボレーション作品や、時期によってはアロマが⾹
る特別なプログラムも提供している。この他、スペシャルイベントとして、⽉に2回ほど、科学、⾳楽、アートなど様々な分野のスペシャリストとのコラボレーションや市⺠の参画による独⾃のイベントを企画・実施している。
地元クリエイターと創り出す、宇宙×音楽プログラム『COSMIC DANCE』
当館の理念である「サイエンス&クリエイティブ」に沿ったプログラムを提供することを⽬的として、開館以来、福岡在住の複数のクリエイターと共に取り組んでいるのが『COSMIC DANCE(コズミックダンス) 』である。福岡在住もしくは福岡に所縁のあるクリエイターが企画し、映像その他のビジュアルコンテンツも地元クリエイターで制作し、出演者もできるだけ福岡に関わりのあるアーティストで構成するようにしている。 利⽤者に満⾜いただけるコンテンツを届けるためにはどのようなアプローチをすればよいのかについて、イベント開催後には毎回必ず振り返りの場を設け、改善を加えてきた。これまでの分析で、集客率は3割から6割ほどと決して⾼くはないものの、参加者の満⾜度は⽐較的⾼いことがわかっている。来てもらえれば楽しんでもらえる。まずはこの場に⾜を運んでいただくための⼯夫が不可⽋であると考えている。
プラネタリウムでスペースアドベンチャー!!!!! Produced by COSMIC DANCE
『プラネタリウムでスペースアドベンチャー!!!!! Prodused by COSMIC DANCE』は、2024年8⽉に実施した。この回では、広⼤な銀河を旅する宇宙冒険をコンセプトに、マルチメディアアート体験プログラムを制作した。「⼦どもたちにライブの楽しみかたを伝えたい」との思いを具現化すべく、コンテンツ・クリエイティブ、広告、体験が⼀本筋でつながるよう、イメージを共有化することに重点を置いた。DJのAKI YAMAMOTOとKPによる胸を⾼鳴らせる選曲と、映像クリエイターのNoguchi KazunobuとCHIKAHIRO YAMAMOTOが⼿がける独創的かつ幻想的な映像によって、参加者を未知なる宇宙の世界へと誘うよう⼯夫した。
設定は、"⾳楽"を動⼒とするスペースシップ、"リズムオデッセイ号"に乗り、2⼈のSDJs(スペースディスクジョッキーズ)と共に未知の惑星探査に出発し、参加者は、⾚い惑星「メロディア」と⻘い惑星「ハーモニア」でのトラブルを回避して無事に帰還するミッションに挑むというものだが、場⾯に応じて「光るブレスレットを振る」「⼿をたたく」という参加型の体験を⽤意することで来場者の満⾜度をより向上させることにつながったと感じている。コンセプトが明確になったことにより、映像の迫⼒や没⼊感も⾼まっただけでなく、「夏休み」「⼦ども向け」に設定したことで、ターゲットが明確になり、番組告知などもわかりやすく制作することができた。この回は、「COSMIC DANCE」単独開催として初の満席を達成している。
宇宙の大冒険「スペースアドベンチャー」を終えて
・とても楽しかった︕︕続きもまた⾒たい︕(40代)
・光るブレスレットでの参加型や最新のテクノロジーで⾮常に楽しめた。機会があれば、また参加したい。(30代)
・⾳楽と映像のコラボレーションでとても楽しめた。前半はこども向けの⾳楽で息⼦も楽しんでいた。映像もきれいで本物の宇宙遊泳をしているような気分だった。右よけ左よけや、拍⼿で体験感もあってよかった。(30代)
・⼿を叩いたり歌ったりしていいのかわからず、盛り上がっていいのか様⼦⾒状態だった。(40代)
・体験型イベントとして好評を得た。参加者に配付した⾚と⻘の光るブレスレットが効果的だった。⼤きな⼿拍⼦や、声をあげながら⼤きく⼿を振ってトラブルを回避するなどのアクションが⾒られた。
・没⼊感ある映像に時折歓声が上がり、特にトラブル演出時はとても盛り上がっていた。
・⾳楽は主にJPOP・KPOPで若い世代向けの有名曲が起⽤され、⼦どもたちが「この曲知ってる︕」と喜んでいた。スタッフ(地元クリエイターを含む)としては、などの感想、意⾒を得ることができた。
『COSMIC DANCE』の影響や反響
これまで出演いただいた10⼈以上のアーティストの多くが、プラネタリウム(ドームシアター)という他に無いステージ環境に魅⼒と可能性を感じ"また出演したい"との声をいただいている。また、アーティストの間でも「科学館でライブイベントが実施されているらしい」と噂になっており、他のアーティストからもイベント実施の相談を受けることがある。このことからも参加者のみならず、出演者側からも、"ドーム状のシアター"を活⽤できる公共施設として認識されつつあることを感じる。 開館以来『COSMIC DANCE』に携わってきた地元クリエイターが、プロジェクションマッピング国際コンペ1minute projection mapping Competition 2021にてTokyoTokyo賞を受賞した。同コンペが初めて東京都開催となった際に、唯⼀の⽇本⼈受賞者であったが、当館での『COSMIC DANCE』での映像制作の経験も、この受賞につながる⼤きな要因になったと思われる。
プラネタリウムならではの価値や効果
プラネタリウム(ドームシアター)には、"クリエイターが挑戦したいと思える""創造⼒を発揮できる"魅⼒的な環境がある。特に⾳楽ライブと映像演出の組み合わせは、他のメディアでは得られない没⼊感を⽣み出すので、クリエイターは、よりよい演出と更なる感動を求めて、毎回新たなチャレンジングな取り組みを⾏っている。またここ数年、若い世代のスキルアップを⽬的とした学習の場にも活⽤されている。現在、『COSMIC DANCE』映像制作の⼀部に映像系専⾨学校の学⽣が関わるが、授業の⼀環として取り組み、プロのクリエイターと共に『COSMIC DANCE』の映像を⼀緒に作ることは、学⽣にとっても貴重な経験であるに違いない。⾃分の作品に触れた市⺠の反応を直接感じることで彼らの感性や技術は⾶躍的に向上していくであろう。これは市⺠にとっても貴重な体験となる。⼈々は、「芸術」が専⾨家だけの特別なものではなく、⼿が届く⾝近なところにあることに気づく。誰でもクリエイターになれるとの気づきが、クリエイティブな地域⽂化全体の活性化につながっていくと信じている。プラネタリウム(ドームシアター)は単なる星空投映の場ではない。地域における新たな交流と⼈材育成を創出し、⼈々とともに"未来の福岡と地球環境を共に創造する拠点"のひとつとなるべく、これからも活動を続けていく。
今後のCOSMIC DANCE
予告動画
昨年に引き続き、今年も「スペースアドベンチャー」をテーマに開催。クリエイターが手がける独創的かつ幻想的な音楽と映像によって、子どもたちを未知なる宇宙の世界へと誘います。全天周スクリーンと音響設備を備えるドームシアターだからこそ実現する、音楽と宇宙への大冒険。アーティストが創り出す、音と映像が融合した宇宙空間をぜひご体感ください。
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