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石川賢治さんインタビュー[月光写真との出会い]

特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」


福岡市科学館では、2026年9月19日(土)~10月25日(日)に特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」を開催しています。月の光だけで作品を撮り続けている月光写真家・石川賢治さんに月光写真との出会いについてお伺いしました。
※ 本文中では敬称を略し、「石川賢治氏」は「石川」と表記しています。

科学館:石川さんは、日本大学芸術学部写真学科を卒業されてから広告会社で勤務されていたと伺いました。商業カメラマンとしてご活躍される中で、月光写真との出会いはどのようなものだったのでしょうか。


特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」 1985年

ニューヨークやハリウッドでのコマーシャル撮影など世界を飛び回ってご活躍されていた石川さん(写真提供:石川賢治氏)


石川: 当時、商業カメラマンとしてテレビCMや新聞・ポスターなどの撮影を手がけていた私は、仕事でハワイのカウアイ島を訪れました。撮影が終わってホテルに戻り、寝る前に近くの海まで散歩しようと外へ出たんです。月明かりで明るく照らされた原っぱを通り、真っ暗な林を抜けると、月光に照らされた真っ白な砂浜がパッと広がっていました。 波打ち際に腰を下ろして夜の風景を眺めていると、海と水平線、そして形の良い雲が幾つか浮かんでいて、ぼーっと見惚れていました。すると突然、右から左へと海面スレスレを鳥が飛び去ったのです。月明かりの中で鳥の姿がハッキリと見えた瞬間、「もしかしたら、月光でも写真が撮れるのではないか」と強いインスピレーションを受けました。これが全てのきっかけです。


科学館: 最初の月光写真は、そのときに撮影されたのでしょうか。


石川: その場では時間がなく撮影できませんでしたが、その後訪れたサイパンで、咲いていたジンジャーの白い蕾を試しに撮影してみました。「墨絵のように黒い影だけでも映ればいいな」という軽い気持ちで、その場ですぐ現像できるインスタントカメラを使って撮ったのです。出来上がった写真をめくってみた瞬間、大変な衝撃を受けました。そこには、太陽の下で見るのと同じように鮮やかな蕾が映し出されていたのです。白い蕾に緑の茎、バックには夜空が写っていました。 その時、「月は太陽の光を反射して地球に届いているんだ」という証拠を突きつけられ、「宇宙感覚」を覚えました。この感動を1枚の写真に収めたい――そう思ったのが、私の月光写真の原点です。

宇宙という無限の暗闇を思うと、時に計り知れない広がりに対する不安や、空恐ろしさ、畏怖を感じることもあります。しかし、その怖さがあるからこそ、裏返せば強烈な興味が湧き、挑み続ける原動力になります。かつてサイパンで、初めて月光で撮影したカメラのフィルムをめくったあの瞬間、手のひらの上に月面で反射して太陽と同じ鮮やかな色彩の宇宙が映し出されたときのショックと感動――そのときから私の心にある「地上の宇宙実感」という熱い想いは、今も糸島の地で、そしてこの写真展の作品の中で、変わらずに息づいています。



サイパンで月の光だけで撮影された作品

石川賢治氏作品


科学館: 月光写真の原点となる体験をされてから、30年間にわたり世界4大陸で満月を追い続けてこられたのですね。福岡へはいつ頃から移住されたのですか。


石川: 10年前(2016年)に福岡県の糸島半島へ移住しました。夜はしっかりと暗く、豊かな自然が残されているあの土地で撮影を重ね、7年かけてまとめた作品群が『月夜の晩に』です。


科学館: 今回の特別展では『月夜の晩に』におさめられている作品が展示されていますね。糸島に移住されてから、ご自身の感覚にどのような変化がありましたか。


石川: 学生時代からずっと東京にいて、原宿や乃木坂など都心に住みながらコマーシャルの仕事をしていました。元々は福岡育ちですが、やはり都会と自然豊かな場所とでは環境が全く異なります。 東京にいた頃から「最初に衝撃を受けた時の地上の宇宙実感を一枚の写真に収めたい」という思いがありました。草木や虫たちの目線になって見上げる星空――糸島に来てからは、より自然と一体になって撮影ができていると感じます。 自然というものは人間がコントロールできるものではなく、こちらが自然に寄り添うしかありません。「これを撮ろう」と意気込んでも、月が出ていなかったり天候が合わなかったりしますから。毎日の散歩の中で出会う四季折々の自然の表情を切り取らせてもらっている感覚です。

長年撮影を続けてこられた石川さんはどのようなことを大切にされているのでしょうか。
次回は撮影のアプローチについてお伺いします。

石川賢治さんの写真集について

福岡に限らず、日本各地で展覧会が開催されたり、メディアで特集されたり、小学校や中学校の教科書で作品が使用されたりと、幅広くご活躍されていらっしゃる石川賢治さん。写真集では、『月光浴』(小学館、1990年)以外にも、イグアスの滝やウユニ塩湖など、月光に照らされる雄大な自然風景をおさめた『 宙 ( そら ) の月光浴』(小学館、2012年)、海の底から山の上まで、30年間の満月の旅ベストショットをまとめた『月光浴 青い星』(小学館、2017年)、日本の春夏秋冬を舞台にした『月夜の晩に』(小学館、2023年)など、これまで11冊の著書を出版されています。最近では、2025年2月に出版された『月とアマリリス』(町田そのこ 著、小学館)の表紙に、石川さんの作品「ジャスミン」が使用されていたのも記憶に新しいです。


『月とアマリリス』(町田そのこ 著/小学館、2025年出版)
『月とアマリリス』(町田そのこ 著/小学館、2025年2月)


※今回の特別展では、季節折々、福岡・糸島で撮影された作品を中心に、北海道から沖縄まで日本各地で撮影された新作を展示します。海外で撮影された作品や、『ジャスミン』の作品展示はありません。

※世界中で撮影された作品は石川さんのWEBサイトでも紹介されています。

※写真集の詳細は石川さんのWEBサイトで詳細が紹介されています。



特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」


特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」

四季折々、満月の夜。私たちは宇宙とつながっている。
1年に12回しかない満月の下で撮り続ける月光写真家・石川賢治。30年間の世界4大陸に渡る満月の旅を経て、2016年より福岡・糸島半島に住み、作品を撮り続けています。本展は、福岡・糸島を中心に、北海道から沖縄まで日本の春夏秋冬を舞台に月夜の情景を綴る写真展です。

月の光で撮影した写真と自然音が織りなす、月夜の没入体験。
ほの暗く照明を落とした会場では、世界各地でのロケ撮影中に石川賢治が撮影する隣で録音された虫の声、さざ波、風の音など、満月の夜の自然音が流れます。昼間と違う表情の原風景の写真と自然音に包まれながら、宇宙とつながりに思いを巡らせてみませんか。


特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」

[期間]2026年9月19日(土)~10月25日(日)
  ※休館日:9月24日(木)、29日(火)、10月6日(火)、13日(火)、20日(火)
[時間]9:30~18:00(入場は17:30まで)
[場所]福岡市科学館3階企画展示室

特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」

特別展 関連プログラム


■ ギャラリートーク[詳細はこちら]
日時:2026年9月27日(日)、10月9日(金)、10月21日(水) 各日14:00~

■ サイン会[詳細はこちら]
日時:2026年9月27日(日)、10月9日(金)、10月21日(水) 各日15:00~

この秋は、この秋は「月光浴」を楽しもう

特別展「石川賢治月光写真展 月光浴 月夜の晩に」