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【レポート】SDGs×福岡市科学館―みんなで考える未来のくらしのつくり方―

2019.02.09 ~2019.02.09

【レポート】SDGs×福岡市科学館―みんなで考える未来のくらしのつくり方―

2019年2月9日(土)にSDGsテーマにしたイベントが福岡市科学館6階サイエンスホールで行われました。今回の参加者は約150人。大人数の募集にも関わらず、早い段階で定員に達しました。興味を持った年齢層も広い!小学生から年配の方まで集まりました。

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SDGsとは何か?

我々はネットやメディアでもSDGsという単語を目にするようになりました。しかし、「SDGsとは何か?」と問われて、答えることのできる方は少ないようです。省略された頭文字を紐解けば、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」ということ。実際、集まった方々、このページを読みにきた方でも、完全に答えきれる人は少ないかもしれません。そこで登壇されたのが、田瀬和夫さん(SDGsパートナーズ有限会社 代表取締役)です。過去に外務省勤務、国連広報センター長などを務めていました。

SDGsの裏にある考え方は「今の世代で満足していても、次世代では足りない」というものです。冷戦の終わった1990年代以降、「今までの枠組みでコントロールできないことが出てきました」と話します。例えば、エイズ、SARSであり、通貨危機などの問題を抱えてきました。

そこで2015年、国連で定められたのが「SDGs」です。誰にも反対されることなく、全会一致で採択されました。「2030年にこういう社会にして次世代に引き渡したい」というのがベースとなります。北朝鮮、シリアなどを含めた193の加盟国・地域も賛同したものです。法的な根拠はありません。それでも、今後のビジネスや科学、人間社会を組み替えるものです。だから、大切にされているのです。

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SDGsとは人類のムーンショット

田瀬さんは「SDGsは人類のムーンショット」と唱えます。ムーンショットという言葉を聞いたことがありますか?それは「大きな目標を掲げて、その時までにやり遂げる」ということです(田瀬さん)。
かつてアメリカは1969年に人類史上初の月面着陸を達成しました。目標年へ向けて逆算したものを達成しました。田瀬さんは「積み上げ式の日本にはない考え方」だと言います。SDGsは17のゴール(=アイコン)と169のターゲットから成り立っています。

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このSDGsに賛同している日本企業があります。住友化学を含む化学メーカー連合は2040年までにマラリア撲滅宣言を表明しています。他方面では、「糖尿病の撲滅」、「空気中の水分を基に水を組成」というのもあるそうです。

その一方で、これまでのビジネスで生み出されてきた「対症療法」を憂慮します。例を1つ挙げるとすれば、「栄養ドリンク」です。栄養ドリンクを飲むことで長い時間を働くことができても、根本的な解決にはなっていません。その前に長時間労働を解決すべきではないか、というのがSDGsの考え方です。目の前に立ちはだかるポイントを乗り越えるだけでは解決にならないのです。その根本に眠るものを掘り下げるのが、SDGsの目標達成の1つにつながるのです。企業だけでなく自治体にとっても、SDGsは欠かせないものです。

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田瀬さんは「169の目標以外にも、人類にとって大切なことを述べている」と違った部分に着目します。その前文をピックアップすれば、「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、いっそう大きな自由における普遍的な平和の強化を追求するものでもある」。つまり「すべての人の"Well-being(幸福)"と"Freedom(自由)"がSDGsのひとつひとつの実現を越えた大きな目標である」という前提があるのです。

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SDGsは地球の危機を救う

休憩をはさんで、5人のゲストによるパネルディスカッションが開催されました。全部はお伝えできませんが、その一部を紹介させていただきます。参加したのは、田瀬さん、松田美幸さん(福津市副市長)、本田隆行さん(サイエンスコミュニケーター)、伊藤久徳さん(福岡市科学館館長)、岩永真一さん(福岡テンジン大学学長)。

伊藤さんは「今、地球は危ないという時です。この場で知恵を集めてもらえたら」と切り出します。

松田さんが福津市の現状を例にあげます。「福津市は竹が増え続けて、広葉樹は減ってきています。それで漁業が厳しい状況に陥っています」。「広葉樹の減少」と「漁業の衰退」...いったい、どう関連しているのでしょうか?「森林(=広葉樹)が減少することによって、魚に必要なプランクトンが減っているのです。このつながりを考えていかないとならない」。この問題を解決するには、「林業」と「漁業」の両者を一体のつながりがあるものとして考えなければなりません。日本だと国の省庁機関が異なりますが、結果、このような課題を後回しになる公算が高くなるのです。

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福津市の場合、そこをつなげてきたのが高校生でした。「実験をすることによって、市民も一緒になって考えるようになりました」と松田さん。市民レベルでSDGsを取り組み始めた代表例だと言えます(最後に松田さんが「市役所全員で向かいます。日本一の市役所となるように」と話していたのが印象的でした)。

伊藤さんは「21世紀はすべてのことがつながる時代。一体になることで克服はできる」と述べています。本田さんは高校生の動きには驚きながらも、「高校生が始めるというところに後押しがある」と期待を寄せます。

担い手になる3つのD

話の過程では、『3つのD』が挙がりました。Design・Digital・Diversityです。Dの力のある人が、SDGsの担い手となるそうです。

伊藤さんが注目したのはDesignのDです。今はモノが溢れている時代。「重要なのは廃棄物の問題。廃棄物を作らないDesignが必要ではないか」と定義します。地球を大切にする。つまり、CO2を増やさない意味でもあります。「人間が大きくなり過ぎた。地球の有限性が目の前に現れている」。この言葉でも分かるように、それがオゾン層の破壊、CO2の排出量など、我々の抱える課題につながっているのです。

一方で岩永さんは「Diversityは難しい」と話すように、この「多様性」と表現の解釈、実行は今後の実現へ左右するものかもしれません。

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身近にあるギャップ、壁とは

今回の時間内に3度の対話時間が設けられました。
① SDGs達成に向けて今、私たちに求められているのは、何でしょうか?
② SDGsの目標と現実(自分や組織や地域)が目指す方向との間にあるギャップとは?
③ SDGsの達成に向け私たちの壁は何だろうか?必要な武器は何だろうか?

その対話を通して各自が、印象に残った言葉+未来への宣言「明日からできる一歩(行動・意識)」を、テーブルに敷かれた模造紙に書きました。

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岩永さんが印象に残ったのは「ひっこめオッサン」。そのサイドには「大人の責任」、「昭和のオッサンの意識改革」と書いていました。そこには高度成長、バブルの自慢話は相いれない世界があるような気がしました。

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個人的に印象が残ったのは「SDGsとの目標とのギャップ」の中で、「企業活動と相いれない部分が多すぎる」という文言でした。「自分たちさえ良ければ、儲ければ、それでいい」という考えは、未来を壊すものになるのかもしれません。

今、一部の自治体の記者会見のバックボードでも、「SDGs」を目にするようになりました。企業、自治体、個人、団体などの全てが、未来を対する責任を負っているのです。これから、皆さんもSDGsを意識する回数が増えていくはずです。



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Yasushi Nakamuta
ライター

新聞社の記者職を経てフリーランスライターに。野球、サッカーなどのスポーツと公営競技が中心だが、最近は経済、グルメ、健康情報なども担当。新聞、テレビ、ホームページなどをフィールドとする。趣味はマラソン(サブ4)、旅行で困らない程度の英会話、断捨離。